June 18, 2009

ことばの饗宴

昔々のエントリで、「ことばの饗宴」という本を買ったという旨書いた記憶がある。
サブタイトルは、「読者が選んだ岩波文庫の名句365」であって、その名の通り、名句集。


名句集なので、名句しか載っていない。名句だけで構成された書物。すごいね。
よく作品のレビュー代わりに引用をしていたけど、最近読んでるのは太宰とかだし、基本的に最近エントリたちがどんよりしていて、ここで太宰の引用なんかをやってもますます暗くなる一方なので、この名句集から引用することにした。引用の引用というか。孫引きというか。
邪道。本来ならその本自体を読んで引用したいところ。そのうち読むかもしれないし、読まないかもしれない。
太宰を引用するより幾分ましなだけで結局明るくは無いけど、以下引用。
感銘、反対、いろいろ刺さったやつを。


・「蘇東坡詩選」より
人生 離別無くんば
誰か恩愛の重きを知らん


・ゴーリキイ「どん底」より
仕事が楽しみなら、人生は極楽だ!
仕事が義務なら、人生は地獄だ!


・郭沫若「歴史小品」より
善の効用を意識した時には、それは、もはや不善である。


・「ゲーテ詩集(三)」より
世界は粥で造られてはゐない。
君等は怠けてぐづぐづするな、
堅いものは噛まなければならない。
喉がつまるか消化するか、二つに一つだ。


・「三好達治詩集」より
いいえ昨日はありません
今日を打つのは今日の時計
昨日の時計はありません
今日を打つのは今日の時計


・木下尚江「火の柱」より
左様です、人生の不可解が若し自殺の原因たるべき価値あるならば、地球は忽ち自殺者の屍骸を以て蔽われねばなりませんよ、人生の不可解は人間が墓に行く迄、片手に提げてる継続問題じゃありませんか。


・マルクス「経済学・哲学草稿」より
もし君の愛が愛として相手の愛を生みださなければ、もし君が愛しつつある人間としての君の生命発現を通じて、自分を愛されている人間としないならば、そのとき君の愛は無力であり、一つの不幸である。


・伊藤整「変容」より
愛とは何か、本当は私にはわかりません。
愛と言うのは、執着という醜いものにつけた仮りの、美しい嘘の呼び名かと、私はよく思います。


・兼好法師「徒然草」より
死期は序を待たず。
死は、前よりしも来らず、かねて後に迫れり。
人皆死ある事を知りて、待つことしかも急ならざるに、覚えずして来る。


・ゲーテ「ファウスト」より
申しておきますが、思索などやるやつは、悪霊に引きまわされて枯野原のなかを、ぐるぐる空回りしている家畜みたいなもんです、その外側には立派な緑の牧場があるというのに。


・岡倉覚三「茶の本」より
まあ、茶でも一口すすろうではないか。
明るい午後の日は竹林にはえ、泉水はうれしげな音をたて、松籟はわが茶釜に聞こえている。
はかないことを夢に見て、美しいとりとめのないことをあれやこれやと考えようではないか。

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