江國香織「いつか記憶からこぼれおちるとしても」
引用。
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この人はいったい、「みんな」って誰のことだと思ってるんだろう。「みんな」なんてどこにも存在しないのだ。誰かをハブにするとき以外は。
ママはお金をつかうのが大好きだ。お金をつかうのは、ママの復讐なのだと思う。幸せじゃないから。
あたしは、ママの喉のうすい皮膚が好きだ。大人の女っていうかんじがする。それからすこし、不幸の匂いも。
フラニーはママを幸せにしてくれたから、だからいなくなってしまってかなしいのだと、あのときママは説明してくれた。
べつにきらいというわけじゃない。世の中は好きな人ときらいな人でできているわけじゃなく、好きな人と、どうでもいい人とでできているのだ。
マ マの考えることはときどきよくわからない。これはあたしが子供すぎるのではなくて、ママが年をとりすぎているのだと思う。この二つはおなじじゃない。全然 ちがうことだ。だって、もしなにかをわかるのに子供すぎるのなら、いつかわかるときがくる。でも、なにかをわかるのに年をとりすぎているのだったら、その 人はもう、永遠にそれがわからないのだ。これはとてもかなしいことだ。
「意味ってなに」
「正しいこと」「それをするのがゼッタイにたしかで、ちゃんと安心していられること」
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