June 28, 2009

団地

昨日は予定外の事態で、近所ではない場所を一人散歩することになった。
しばらく住宅街を歩いていたが、ふとなんだか懐かしい建物群に出会う。団地である。

私 は団地に住んでいた経験もないし、団地のプロというか団地に思いいれのある方々がいらっしゃるのは重々承知で、団地の雑誌というものも見かけたことはある が目を通したことすらなく、こんな団地未経験者が団地を語るというのも出すぎた真似かと思うけれども、と前置きをした上で書く(まあジャズも野球もそうな んだけどね)。


団地に住んだことはないものの、小学生の頃は団地の友達の家にちょくちょく遊びに行った。その子の家の「わたるがぴゅん」とか「YAWARA」とかを読むのも楽しかったけれど、団地という環境が面白かった。
集 会所のあたりで遊んでいると、隣のクラスの子が通りかかって一緒になって遊んだりだとか、クラスの男子が大きな声で悪口を言って逃げていくとか、この子が 誰の妹でお母さんで、と紹介されたりだとか、もう学校と家とが連続しているのである。そこら中知り合いだらけなのである。しかも、友達の家のはしごが簡単 にできる。勿論、自分の家の近くにも友達はいたので、そこらで遊んでいたらよく出会ったし、アパートの駐車場でよく靴投げとかだるまさんがころんだ的なも のをして遊んだけれど、団地というのは遊ぶ場所が限られているから、どうしても距離が近い。仲良くなりやすい。
夕方になるとどこの家の窓からも夕食の匂いがそれぞれしてきて、それが親しすぎて入り込めない家庭の匂いのような、全然別の家の匂いで、早く家に帰りたくなったものだった。


で、散歩をしていたら、団地があったわけである。
つい、団地の中を歩きたくなって、大回りする。
結 構大きな団地で、大分老朽化している。黒くすすけたような感じの外壁に、草木の茂った敷地。テレビなんかで見るように寂れているのかと思ったが、全然そん なことはなくて、春休みに入った子供たちが暇をもてあまし頭にビニールか何かをのせて遊んでいたり、けだるそうにおしゃべりしていたり、小さなベランダに 所狭しと洗濯物が干されていたり、自転車や三輪車が金網に立てかけてあったり、知らない人々の日常がそこにあった。ほぼ全ての住宅に人が住んでいるよう だった。狭いながらも平和な、親しげな社会があった。
私はその団地の持つ懐かしさと、その懐かしさが現在進行形であることと、その日常があまりに排他的であることにすっかり満足して、帰路についた。

そこらに植わった桜の木はもはや瑞々しい葉ばかりとなり、さくらんぼが鈴生りであった。桑の実もまた熟して落ちていた。
さくらんぼは小学校の裏に。酸っぱかった。
桑の実は家の庭に。甘かった。

何を見るにつけても何かが想起されるほど、記憶が積み重ねられたのだなと思う。

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